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パトリス・カタンザロ氏 インタビュー

聖書の中にあるフレーズ「ある日、神が人間を創造した」という言葉がある様に、パトリスカタンザロはフェティッシュのシーンに おいての女性像を作り上げた。パトリスカタンザロ、彼は女性を女神に置き換えフェティッシュがもたらす感性、セクシー、 ゴージャスさ、時に危険な魅力等をコスチュームと共にクリエイトし続けている。代表的なコスチュームのコルセットをはじめとし、 女性をより引き立ててくれるドレス、女性をより魅力的に表現するデザイナーと言えば、それは「パトリスカタンザロ」の事である。


2017年で35周年を迎えますが、その35年はパリのナイトライフを支えてきた時間ではないでしょうか。

そうですね。今から35年前、最初は毛皮と皮製品からスタートしました。その後、様々なデザイナーの元で勉強と経験を重ね
自然な流れで舞台衣装のデザインに辿り着きました。舞台衣装のデザインをしていた際にコスチュームがもたらす、ある「魔法」を見つけた事がきっかけでしたね。それは、コスチュームを身にまとう事によってまるで体の皮膚が1枚むけるかの様に今まで自分が出さなかった新しい自分がコスチュームと共に誕生する、ということでした。女性が潜在的に持つ「変身願望」。これを舞台に立つ女性だけではなく日常生活のシーンで可能にしたいと強く感じました。その後、舞台衣装のデザインからフェティッシュというシーンにクリエイトする場所にスライドしたのです。当時のパリのナイトライフは活気に満ちあふれていました。人々はより刺激を求めエロチシズムを表現したかったのですが、身に付けるコスチュームを含め、表現方法が時代について行けてない状況でもあったのです。彼女たちが求める物を作って表現したい、そんな思いでスタートして今日に至りました。エロティックなコスチュームを身にまとう事は、舞台に立つ女優の気持ちと同じ事ではないでしょうか。それは本来の自分なのか、それともどこかで求めている自分の一部なのか・・・どちらにせよ表現は自由ですね。


どのような経緯で舞台衣装デザインにたどり着きましたか。また、デザインを起す上でセクシーさとフェティッシュへの情熱はどこから生まれて来たんでしょうか。

思い起こすと僕の子供時代の話からになります。親が毛皮商人だったこともあって小さい時から洋服のデザイン画を描く事が大好きでした。最初に僕のスタイリングのモデルとなってくれたのはテディベア。今思うとチグハグな洋服を着せられてちょっとかわいそうだったなって思いますけど(笑)少年期は毛皮を買いに来るキレイな女性のお客様が来る度にテーブルの下にもぐる、スカートの下に着用している物がどの様なものなのか知りたくてしょうがなかったのです。女性が身に付けるガーターやペチコート、フリルにレースなど子供の時の興味感覚と幻想をそのまま持って後にスタイリストの学校に入学し、それらに精通する舞台衣装を専攻しました。フレンチカンカンの衣装やストリップの衣装を手がけた事を境に、フェティッシュが持つ表現力の無限さを体感したのです。舞台に立つ女性はトータルで10回以上もヘアスタイルから脚の先まで衣装を変えます。身にまとう衣装を替えその都度新しい自分を表現する舞台の魅力に僕はすっかり取りつかれてしまいました。表現する側も、それを見に行く側もワクワク楽しい気持ちになる。舞台の醍醐味ってここにあるのだと思います。


どのような経緯で舞台コスチュームのデザインからフェティッシュコスチュームデザインに移り変わりましたか?

舞台衣装からデザインのステージをフェティッシュに変えた流れは自分の中でもとっても自然な出来事でした。今でも当時の仲間と思い出話しをしますが、デザインするステージが舞台からフェティッシュに変わっただけ、自分自身に関しては何も変わりはないのですよ。強いて言えば、自分がデザインするコスチュームを着る人間が舞台女優から一般の女性に変わっただけ。それだけのこと。舞台にて沢山のお客様に喜んで頂ける様何時間もかけてメイクをしたり準備することは、日常生活のシーンにおいても同じだと言えます。例えば女性が恋人とデートする時や好きな人に会いに行く時、綺麗にメイクをしたりヘアスタイルや洋服をあれこれ考えて時間をかけますよね。そこには喜んでくれる相手の存在がいて、そこから生まれる刺激や感情というのは舞台や映画とまったく同じ物なのです。女性にはもっと自由な気持ちと感覚で着飾ることを楽しんで欲しいですね。1人1人にドラマがあるように、毎日世の中では様々な出来事が生まれています。特にナイトシーンにおいては男女が作るドラマは星の数ほどあり、数える事なんて出来やしない。これらのドラマはまさにエンドレスと言えますね。

ライクラやエナメル、レースなど様々な素材を使いつつ、センスも良く品のあるデザインに仕上げられていますよね。ファッション業界はライバルも多く古い伝統や堅苦しい環境でもありますが、どのように参入していかれましたか。

強引な割り込みはしませんでした。大切なのは自らがやっている事を周囲に認めてもらう、これしかありません。その気持ちで1日16時間仕事をしているわけです。叩かれても踏まれても絶対に立ち上がる。諦めず自分を信じて続ける事によって自分の本気を周りに理解してもらう。私はセカンドデザイナーとして過ごした時間が長かった分、悩んだり苦しんだりした時間も長かった。けれど、自分が信じている事、エロチシズムをフェティッシュというステージで表現し、それを待ち望んでいる人達が大勢いる事を決して忘れはしなかった。今となってもエロチシズムは自分のエネルギーであり、生きて行く糧なのです。


色鮮やかで華やかなファッションショーを展開され、カメラマンも有名な方を起用されていますね。まるで映画のようなコレクションですね。

通常のファッションショーは「モデルが洋服を着て歩く」ですけど、これってちょっとつまらないと思いません?ショーごとにストーリを作る事はもちろんですけど、僕は起用するモデルはプロだけに限らず素人にも出てもらうのです。そこにはリアル感が欲しいから。それはどんな女性でもファンタズムを現実にする事が出来るからです。ポルノスターを起用した際、あえてポルノスターの体にコスチュームをまとわせたのも僕が初めてのことでしょう。写真に関して言えば、「クリストフ」とはとってもマジカルで理想的な出会いでした。僕が頭でイメージしている事を説明無しで彼は表現してしまう人。作品を通じて時間を共有する事によって今では立派な友情関係になりました。僕たちのコラボレーション映像も世界に流れているしね。「アンディ」はとっても外交的で優しく、有名なのにそれを全く感じさせない人。もちろんアーティストとしても最高ですよ。彼が作る仕事の流れはまるで旅行に出かけているのではないかなって錯覚する位、意味深い空間。撮影中モデルとの熱心なやりとりを見ているとこっちまでその情熱が伝わって来る様な・・・気が付いたら涙が流れていた時もあったり。そんなカメラマンとの出会いはラブストーリだと僕自身は感じています。


これまでのパトリスカタンザロの作品を見ますと、露出や肌の透けるデザイン、挑発的なチュチュやランジェリーをデザインしつつも、真逆なイメージのセクシーなロングドレス混在してますね。ハイファッションの領域にフェティシュも入るのでしょうか?

ハイファッションの領域にフェティッシュが入るかどうかは僕自身もわかりません。かつては時代の流れに逆行していると言われた僕なので。ただ言える事は、今日、それがトレンドの1つになって来ているという事。最近ではフェティッシュのドレス基準が様々なハイファッションの中に見る事が出来ますね。それは昨日まで僕の事を認めなかった人達が今日、認めてくれる様になった、と言えるのかな。世の中がフェティッシュというファッション文化を受け入れ、人々の感覚が変わりゆく環境の中に自分もほんの少し関われているのならば嬉しいですよね。人間て素直じゃないし、保守的な価値観でいてもトレンドに左右されて、良いかも!に変わる。閉鎖的な感覚から一歩踏み出してもらえたら僕も嬉しい。そして同時に彼女達からプレタポルテデザイナー、パトリスカタンザロとして見てもらえたら最高ですね。

35周年に際し、ウェブサイトの他にブログも始められましたね。

ブログを通じて自分達が好きな事を発信し、色々な人達とシェア出来る事はとっても素晴らしいですね。これからもブログを通じて人と出会い、感性を成長させて行けたらと思っています。人とコミュニケーションをする事は僕にとって最も重要なことであり、また勉強の場でもあるのです。このインタビューを含め僕を取り上げてくれることに心から感謝をしています。


こちらこそ貴重なお話しありがとうございます。パトリスカタンザロのコレクションの中には男性向けのブランド「セカンドフェイス」もありますよね。

ありがたい事に、こちらも好評を頂いております。ブランドコンセプトは「男性にセクシーなアイテムを与えながらも男らしさを演出する」ですが、これがとっても難しい事なのです。男性は女性性と違って変身願望も低いのですが、セカンドフェイスを一回トライしたら楽しくて止められない!といった感想を頂いています。身にまとう物によってもう一人の自分になれるという魔法は女性に限らず男性にも起こりえる事が分かりました。これは私にとって大きな発見でもあり勉強にもなりました。オリジナル素地のライクラの良さは一回着用したら分かります。肌触りの良さ、着心地の快適さは男性にもしっかり伝わっている証です。


パトリスカタンザロの今後の予定をお聞かせ下さい。新しいコレクション作成、またこれまでの作品を海外に発信する事はお考えですか?

当面の大きな目標は、昨年出会った若手女性デザイナー「クレマンタイン リトルドール」を展開して行く事です。僕も彼女の影響で自分の年齢が20才位若返ってしまったのかな、と感じるくらい。彼女によって若い時の感性を呼び起されました。互いに持つ感性を共有し、互いが持っていない感性を補う関係が生み出す作品はまさに新たな境地です。彼女が持つフェティッシュの感性は極めて斬新であめ玉の様にカラフルで甘酸っぱい世界を作ります。コレクションの内容はふわふわした夢の中の可愛らしいイメージだけではなく、女性らしさを失わない両面を備えています。